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うつ病:身体的症状も出ている方の事例

2021/01/02 うつ病

1.病歴
その方(女性)はご主人の経営する店でばりばり働き、近所ではしっかり者で通っていたそうです。
あるとき、店の外で倒れているところを発見されて、救急車で病院に運ばれました。
退院後も体調が悪く、アルコールを飲んでいないにもかかわらず、泥酔状態のように、1人で歩けない、記憶力が落ちるなどの症状がありました。
階段から転落して骨折、入院し、幻覚症状も出るようになりました。
退院後も自宅に引きこもり、トイレ、食事もご主人が1日中世話をしなければならなくなり、とうとうご主人の店もたたんでしまったとのことでした。
2.無料相談~裁定請求~障害基礎年金2級受給決定
岐阜・名古屋周辺域の方でしたが、ご主人が精神障害の障害年金申請についてインターネットで検索し、無料相談のお電話をいただきました。
奥様の介護であまり留守にできないということで、ご自宅の近くの喫茶店で打ち合わせし、ご主人から病歴などをうかがいました。
奥様は家の中でもふらつき、よく転倒し、けがをするので、眼が離せないということでした。
トイレ、食事の世話もご主人がしていたそうです。
初診日から1年半後(障害認定日)頃は既に重いうつ病であったため、認定日(遡及)請求可能でした。
現在通院中の医療機関に、障害認定日、及び現在の状態についての診断書作成を依頼し、傷病名:うつ病で、障害基礎年金の認定日(遡及)請求をしました。
その結果無事、障害基礎年金2級(遡及)が支給決定しました。
ご主人は奥様の世話のため、店もたたんでしまい、ご主人自身もうつ病になり、病院を受診し、医師に「死にたい」ともらしたそうです。
奥様の年金受給がご主人の精神的負担を和らげ、またお仕事を再開できるようになることを願っています。


うつ病、注意欠陥多動性障害:仕事のオーバーワークが原因の事例

2020/12/26 発達障害

1.病歴
その方(男性)は幼少期から高校生までは、いじめで不登校になったり、忘れ物が多く先生に叱られたり、または遊びだしたら止まらない活発な時期があったり、浮き沈みが多かったようです。
就職後は、製造部の同期の中で一早く昇進し天狗になり、他の社員の反発で落ち込んだようです。
購買部に異動となり、仕入先への無茶な値引き交渉を指示され、下痢、不安感が続き、精神科を受診し、うつ病と診断されました。
その後軽快するものの、調子に乗って仕事をやりすぎてしまい、オーバーワークとなり、疲弊し、休職となりました。
その後復職しますが、担当の仕入先が多く、複数の仕入先のトラブルが同時に起き、1人ではお手上げ状態となり、部品納入が滞り、全社で大問題となり、どうにもならなくなり、再度休職となりました。
その後復職し、大きなプロジェクトを長時間残業の末、頑張ってやり遂げますが、プロジェクト完了の途端に燃え尽き症候群となり、何もできなくなり、三回目の休職となりました。
最初の頃はうつ病として、治療されていましたが、注意欠陥多動性障害もあることがわかり、その治療が加わりました。

2.無料相談~裁定請求~障害厚生年金3級受給決定
その方は遠方の方でしたが、精神障害に詳しい社労士を調べ、私に無料相談の問い合わせメールがありました。
その後電話で病歴、通院歴を伺いました。
優秀だが調子に乗りやすいタイプの方のため、どうしても調子がいいと仕事をやりすぎてしまい、オーバーワークとなり、精神的にまいってしまうということを繰り返していたようです。
現在通院中の医療機関に診断書を作成していただき、傷病名:うつ病、注意欠陥多動性障害で、障害厚生年金の申請をしました。
その結果無事、障害厚生年金3級が支給決定しました。
私も36年程サラリーマンをしてきて、同僚が疲弊して休職、退職したりを多数見てきました。
雇用する会社は社員の健康状態をしっかり把握していただきたいと同時に、本人自身もパンクする前に、時には仕事を断る勇気を持っていただきたいと思います。


双極性感情障害(躁うつ病):5年遡及で2級が認められた事例(岐阜・名古屋周辺域)

2020/12/05 躁うつ病

1.病歴
その方は10年程前、大学卒業後就職し、営業職をしていました。
1年も経たずに、営業成績トップとなりましたが、もっともっと売上を伸ばせと期待が大きく、その期待に応えようと頑張りすぎ、頭痛が酷くなり、疲れがとれなくなりました。
病院に行きましたが、1日のみの受診で自己中断してしまい、頑張って仕事を続け、頭痛、集中力低下がますますひどくなり、会社に行けなくなりました。
その後自殺未遂→閉鎖病棟入院を幾度も繰り返しました。
その後結婚、出産をしましたが、育児、家事はできずに、母親に依存していました。
母親は移動に1日かかる遠方に住んでいましたが、育児、家事をするため、度々泊まり込みで来てくれました。
母親、ご主人には迷惑をかけっぱなしで、生きているのが申し訳ない気持ちで、さらに自殺未遂を繰り返していました。

2.無料相談~裁定請求~障害厚生年金2級(遡及)受給決定
その方は岐阜・名古屋の近くで障害年金申請の代行をしてくれる社労士を調べ、私に無料相談の電話がありました。
電話で病歴、通院歴を伺いました。
非常に通院歴が多いことと、自殺未遂を10年間相当数繰り返していたことに驚きました。
しかし、営業成績トップながら発病し、病院を受診、最初の自殺未遂のところの話になると、当時のことを思い出し、泣き声になり、ヒアリングできませんでした。
遠方に住んでおられる母親に電話で、当時のことを詳しく聞くことにしました。
初診日は10年程前の厚生年金加入中、初診日から1年半後の障害認定日頃既に症状は重く、また現在も同様に重いため、認定日(遡及)請求可能でした。
障害認定日頃通院していた病院と、現在通院している病院に診断書を作成していただき、双極性感情障害(躁うつ病)で、年金事務所で申請手続きをしました。
結果、遡及2級が認められ、5年分の障害厚生年金の受給(相当高額)がありました。
今迄苦労をかけたご主人、相当高額な交通費をかけて往復を繰り返してくれた母親に報いたいとおっしゃっていました。


統合失調症:10年ぶりの再挑戦で2級が認められた事例(岐阜・名古屋周辺域)

2020/11/28 統合失調症

1.病歴
その方は14年程前、ご主人と不仲になり、不眠、希死念慮も出てきて、精神科を受診しました。
その後も記憶力が落ちたり、家事ができなくなっても、ご主人は病気への理解はなく、怒鳴られ、症状はますます悪化しました。
妄想、幻聴、幻覚の症状も現れるようになり、統合失調症と診断されました。

2.無料相談~裁定請求~障害基礎年金2級受給決定
その方は岐阜・名古屋周辺域の障害年金申請に詳しい社労士をインターネットで調べ、私に無料相談の電話がありました。
ご自宅近くのファミレスでの打ち合わせを提案しましたが、他人に見られるのは嫌だということで、それほど近くではありませんが、時間をかけて弊事務所を訪問されました。
14年程前の発病から、現在までの病歴、通院歴を伺いました。
10年程前にご自分で、障害年金の申請をして、不支給とされたとのことでした。
5年程前から就労はできなくなりました。
最近、物忘れが激しくなり、家事も満足にできず、統合失調症特有の症状(妄想、幻聴、幻覚)もあり、とても自分で申請できないので、再度の申請をお願いしたいということでした。
いろいろ熱心にお話いただきましたが、コミュニケーションにも問題があり、込み入った話になると、何度も何度も同じ話の繰り返しになり、なかなか話が前に進まないといったことはありましたが、時間をかけてゆっくり話を伺いました。
10年程前に裁定請求したときの書類一式コピーも年金事務所に取り寄せてもらいました。
ご本人の申請書類の文字は、現在の話しぶりからは想像できないほど、きれいな文字と文章であり、本来は聡明な方であったことがうかがえましたが、10年の歳月で統合失調症が悪化し、今では当時のような文章の作成は難しく思われました。
日本年金機構の「障害認定基準 精神の障害」は、統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」、「気分(感情)障害」、「症状性を含む器質性精神障害」、「てんかん」、「知的障害」、「発達障害」に区分され、区分毎に例示が示されています。

統合失調症2級の例示には、「残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの」と記載されています。
それらの例示内容が実際の症状にあてはまるのであれば、その内容をしっかり診断書に盛り込んでもらう必要があります。
それに留意し、現在通院中の医療機関に診断書を作成していただいたところ、少し記載不足の部分があり、根拠を示し、医療機関に修正をお願いしたところ、快く修正に応じていただけました。
傷病名:統合失調症で、年金事務所で裁定請求手続きを行い、障害基礎年金2級が認められました。
「久納さんにお願いして良かったです。ありがとうございます。次回更新も宜しくお願いします。」と、10年ぶりの再挑戦での障害年金受給決定を喜んでおられました。

 


慢性膵炎:審査請求(不服申立)で遡及2級が認められた事例(相当因果関係の有無)

1.病歴
その方は約8年前、お腹が痛くなり、入院、急性アルコール膵炎と診断されました。
その後飲酒、タバコは禁止され、5年間体調はよく、サラリーマンを問題なく続けていました。
約2年前再びお腹が痛くなり、入院、慢性膵炎と診断されました。
かなり重症であり、膵管にステントを挿入し、今後定期的に交換が必要でした。
立ち上がり体を動かすと、めまい、立ち眩みがあるため、1日の大半を横になって過ごしていました。
また沈痛目的で医療用麻薬も処方されていました。

2.無料相談~裁定請求~却下決定~審査請求~障害厚生年金遡及2級受給決定
その方は障害年金専門の社労士をインターネットで調べ、遠方でしたが私に無料相談の電話がありました。話をするだけでも辛そうでした。
約8年前の急性アルコール膵炎の初診時は、保険料納付要件を満たしませんでした。
約2年前の慢性膵炎の初診時は、厚生年金加入中であり、保険料納付要件を満たしていました。いずれかが初診となります。
その方は医師より、約8年前の急性膵炎と約2年前の慢性膵炎は無関係だと聞いていたため、約2年前の慢性膵炎の初診日を今回申請の初診日として、裁定請求することにしました。
しかし、万一日本年金機構で急性膵炎と慢性膵炎に関係があると判断された場合に備え、社会的治癒の申立も合わせてすることにしました。
急性膵炎から慢性膵炎の間の約6年間会社に勤務していたときの同僚2名に、元気に勤務していたことを申立していただきました。
約2年前の慢性膵炎の初診日を今回申請の初診日として、傷病名:慢性膵炎として認定日請求をしました。
それには、以前の同僚2名の申立書も添付しました。
数か月後、慢性膵炎の初診日が約2年前と認められないとして、却下通知が届きました。
その方に相談したところ、医師より、約8年前の急性膵炎と約2年前の慢性膵炎は無関係だと聞いていたのは間違いないということだったため、不服申立(審査請求)をすることにしました。
主治医に、約8年前の急性膵炎と約2年前の慢性膵炎に関連はないという見解を意見書に書いていただき、それをメインに厚生局に審査請求しました。
万一約8年前の急性膵炎と約2年前の慢性膵炎は相当因果関係があるとされた場合にそなえ、再び、社会的治癒の主張も繰り返しました。
国民年金・厚生年金保険の障害認定基準の第1 一般的事項 2 傷病

には、「(2)「起因する疾病」とは、前の疾病又は負傷がなかったならば後の疾病が起こらなかったであろうというように、前の疾病又は負傷との間に相当因果関係があると認められる場合をいい、負傷は含まれないものである。」と相当因果関係に関する記載があります。
その後、日本年金機構からカルテの提出を求められ、本当に両者に関連がないか調査されました。
その後、日本年金機構から処分変更の通知があり、障害厚生年金2級が認められました。
主治医に意見書を作成していただいたものの、カルテを精査され、少し心配していましたが、何とか初診日が認められほっとしました。
その方は、1日の大半を横になって過ごしており、仕事もできなかったので、障害厚生年金遡及2級受給が決定し、高額な遡及分の入金もあり、非常に喜んでいただけました。


うつ病:審査請求(不服申立)で遡及2級が認められた事例(処方薬の関係)

2020/11/07 うつ病

1.病歴
その方は28年前に電車に乗っているときに、動悸、震え、不安感があり、近所のA内科を受診し、不安神経症と診断されました。
その後別のBクリニックを紹介され、約1年9ヶ月受診しました。
4人家族で生活費もままならず、生活保護を検討するほど経済的に窮し、もう限界と思った瞬間にパニック症状が出るようになり、家事、炊事、通院も含め一人での外出もできなくなりました。
その後、友人の勧めで、パニック障害に詳しいCクリニックに転医しました。
最初は、近所の友人にそのクリニックに連れて行ってもらい、受診していました。
夫からは、「何で1人で病院に行けないんだ!」と怒鳴られ、もう離婚し生活保護に入ろうと、医師にその話をすると、「旦那さんを連れてきなさい」と言われ、次回受診時、医師がご主人に、「奥さんは見た目では分からないけど、死の苦しみなんですよ」と言ってくれて、涙が溢れて止まらなかったそうです。
そのクリニックに約26年間毎月通院しましたが、その中で1人で受診できたのはわずか数回で、後は、近所の友人とご主人に連れて行ってもらったそうです。
約26年間就労も殆どできませんでした。

2.無料相談~裁定請求~障害基礎年金事後2級受給決定~審査請求~障害基礎年金遡及2級受給決定
その方は障害年金に詳しい社労士を探して、まず遠方ながら私に無料相談がありました。
以前転倒し、脳脊髄液減少症の疑いで脳外科にもかかっており、障害年金を申請したいとのことでした。
しかし、精密検査で脳脊髄液減少症の確定診断は得られず、28年前から患っているうつ病で障害年金を申請する方針としました。
うつ病の初診はA内科ですが、28年前のカルテは既に残っておらず、2番目に行ったBクリニックは既に廃院でした。
しかし、3番目に行ったCクリニックで、A内科、Bクリニックの受診歴を把握していたため、初診証明は何とかなりました。
初診日の1年半後の障害認定日頃は、Bクリニックを受診していました。
Cクリニックに最初に受診したのは、初診日から1年11か月後でした。
既に廃院となっているBクリニックで診断書を書いてもらうことはできないため、障害認定日時点の診断書については、やむをえずCクリニックに最初に受診した時点の診断書をCクリニックに書いてもらいました。
また、裁定請求(現在)時点の診断書もCクリニックに書いてもらい、両者の診断書を添え、うつ病で認定日(遡及)請求手続きを年金事務所でしました。
その結果、裁定請求(現在)時点は障害基礎年金2級が認められました。
しかし、障害認定日時点は、障害年金2級に該当しないとして、不支給決定となりました。
不幸中の幸いだったのは、障害年金2級に該当しないとした「棄却」決定であり、認定できない「却下」決定ではなかったことです。
障害認定日時点の診断書は原則初診日から1年半後から1年9ヶ月後までの3か月間の現症日の診断書であることが必要です。
請求するときに必要な書類等 医師の診断書

しかし、初診日から1年11か月後の診断書でも、認定できない「却下」決定ではなく、認定(障害の程度を判定すること)はできるが、障害年金2級に該当しないとした「棄却」決定だったのです。
障害認定日時点、裁定請求(現在)時点共に、傷病名は「うつ病」、日常生活能力の程度は「4」であり、本来両者2級が認められるべきです。
厚生労働省の保有個人情報開示請求

で、障害状態認定調書を取り寄せました。
すると、障害認定日時点、即ちCクリニックに最初に受診した時点の診断書の処方薬には、抗不安薬のみで、抗うつ剤が無いことで、軽度と見られたことが原因とわかりました。
Cクリニックに最初に受診したときはまだ、抗うつ剤が処方されていなかったのです。
(しばらくして、抗うつ剤が処方されるようになりました。)
その方と相談の上、遠方の厚生局に対して、審査請求をすることにしました。
Bクリニックは廃院のため、どうにもならず、Cクリニックの初診頃のカルテを取り寄せました。
すると、前医(Bクリニック)での受診状況を本人に聞き取りした内容が1頁記載されていました。
その中に、2行だけ、前医Bクリニックでの処方薬の記載があり、抗うつ剤名と抗不安薬名の記載がありました。
前医Bクリニックで抗うつ剤処方があることがわかり、それをメインに審査請求で、遠方の厚生局の社会保険審査官に主張し、障害基礎年金遡及2級が認められました。
障害認定日は約26年前であり、26年分の年金がもらえるといいのですが、
年金の時効

があり、最近の5年分しか年金をもらうことはできません。それでもかなり高額な一時金をもらえることになり、お電話で喜びの声を頂戴しました。


うつ病:就労が影響して等級目安より軽度に見られた事例

2020/10/31 うつ病

1.病歴
その方は、作業中、自分の仕事と無関係なことをうるさく言う同僚がおり、パニック発作を起こすようになりました。
徐々にひどくなり、うるさく言う方が目の前に現れるだけで、手の震え、口がパクパク勝手に動く、顔面麻痺といったパニック発作が出るようになりました。
リストカット、など自傷行為も度々するようになり、会社は退職しました。
その後、就労移行支援施設に通所を始め、半年間そこで、就労の訓練をした後、一般就労先を紹介してくれる予定でした。
しかしながら、精神的に辛く、その施設も徐々に行けなくなり、今の通所状態では、A型就労事業所も紹介できない、と言われました。

2.無料相談~受任~障害厚生年金3級受給決定まで
その方が通院している医療機関から、紹介を受け、最初無料相談を受けました。
障害認定日も精神科に通院し、現在まで継続的に通院していました。
障害認定日時点通院の精神科と、現在通院中の精神科に傷病名:うつ病で診断書を作成していただき、年金事務所で申請手続きをしました。
その結果、障害認定日時点は障害等級3級にも該当しないとして、遡及は認められませんでした。
裁定請求日(現在)は、障害等級3級の受給が決定しました。
その方は、国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン

「障害等級の目安」に照らしてみると、障害認定日、裁定請求日(現在)共に、障害等級2級に該当していました。
しかしながら、障害認定日時点不支給、裁定請求日(現在)障害等級3級という結果となりました。
障害認定日時点は、一般就労(厚生年金加入)の会社に勤務中、現在は障害者のための就労移行支援施設に通所中ということで、厳しい結果となりました。
就労に関しては、国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 精神の障害

に次のような記載があります。
「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害の認定に当たっては、次の点を考慮のうえ慎重に行う。
日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。
また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。」
このような基準があるにも関わらず、「就労移行支援施設に通所中」というだけで、かなり厳しく判断されました。
なお、気分(感情)障害とは、精神障害のうち、長期間にわたり悲しみで過度に気持ちがふさぎ込む(うつ病)、喜びで過度に気持ちが高揚する(躁病)、またはその両方を示す感情的な障害を示す障害を気分障害といいます。
したがって、その方のうつ病は、気分(感情)障害に含まれます。
障害者総合支援法に規定される就労移行支援

に、就労移行支援とは、「一般企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う」とされています。
そのような施設に安定的に通所できていればまだしも、まともに通所できていない状況であり、医師にはその実態を診断書に表現していただいたにもかかわらず、形式的に厳しい判断がなされたのが実態です。
日本年金機構(厚生労働省)には、就労に対する過剰な評価を是正していただけるよう切に要望します。


大動脈解離:医師に診断書作成を拒否された事例

2020/10/24 心疾患

1.病歴
その方(男性)は、3年前に急性大動脈解離を発症、大病院で人工血管の手術を行い、障害厚生年金3級を取得されました。
力仕事は休み休みでないとできない、また、排尿、排便障害など他の障害も併発し、日常生活、就労共にご苦労されていました。
更新時期を迎え、日本年金機構から更新用診断書が送付されました。
医師に更新用診断書作成をお願いしたところ、既に私は完璧な治療を施し、普通に生活できるので、診断書は書かない、と拒否されました。
事情を理解された病院のケースワーカーさんに、主治医に対して診断書作成をお願いしていただいたそうですが、態度は変わらなかったそうです。
お近くの年金事務所に相談し、「支給、不支給、等級変更は日本年金機構本部で決定します。お医者様には現状をありのままに書いてください、とお伝えください」と言われ、主治医に伝えましたが、頑なに書いてくれません。
やむをえず、他の病院で書いてくれないかあたりましたが、手術をした病院に書いてもらえばいいと言われ、断られたそうです。

2.無料相談~受任~障害厚生年金3級更新決定まで
八方塞がりとなり、インターネットで、急性大動脈解離の経験のある社労士を見つけ、私に相談がありました。
その時、既に更新用診断書提出時期を3ヶ月経過していました。
一刻も早く相談したいということで、弊事務所にすぐ来られました。
まず、私からも年金事務所に電話し、診断書提出が遅延している理由の説明、打開策は無いか相談をしました。
やはり、「支給、不支給、等級変更は日本年金機構本部で決定します。お医者様には現状をありのままに書いてください、とお伝えください」といった説明の繰り返しでした。
主治医に、その方の命を救っていただいたお礼と共に、診断書が何故必要なのかを丁寧に書き、診断書作成依頼文を作成し、送付しました。
何とかご理解いただき、診断書を作成していただけることになりました。
診断書ができあがったときには、更新用診断書提出時期を4ヶ月経過していました。
急ぎ、遅延理由書と共に、診断書を日本年金機構に送付しました。
送付の2か月後無事、障害厚生年金3級更新決定通知が届きました。

「日本年金機構 障害状態確認届の提出の注意点」

に、「障害状態確認届の提出が遅れたり、記載内容に不備がある場合は、年金の支払いが一時止まることがありますので、提出期限までに提出してください。」と記載があり、注意が必要です。
時々、今回のように、医師に診断書作成を拒否されたという相談を受けることがあります。
それぞれ事情、状況が異なるため一様な対策はありませんが、まずは粘り強く冷静に主治医に説明することが必要かと思います。


脳出血:診断書(日常生活動作)を修正していただいた事例

2020/10/17 肢体障害

1.病歴
その方(女性)は、夜中に起きて、水を飲もうとしたら、口から水がこぼれ、鏡を見ると、顔半分が垂れ下がっていました。
急ぎ救急車で病院に運ばれたときには、左手足は動かなくなり、入院となりました。
左上肢はほぼ動かず、痙縮がありました。
左下肢は内反が強く、常に装具をつけていないと、歩けませんでした。
初診日から、6ヶ月で症状固定と判断され、リハビリも終了となり、退院となりました。

2.無料相談~受任~障害基礎年金2級受給決定まで
比較的近く(東海地方)にお住まいの方で、障害年金申請代行の社労士を探しておられ、インターネットで岐阜の社労士を見つけ、ご連絡がありました。
お会いできない距離ではありませんでしたが、外出も不自由ということで、電話、メール、郵便で進めることになりました。
初診証明は救急搬送された病院で簡単にとれました。
初診日から、6ヶ月で症状固定と判断されたため、リハビリが終了し、退院後定期的に受診されていた病院で診断書を作成していただきました。
障害認定基準 一般的事項には、障害認定日の説明があります。
日本年金機構 障害認定基準 一般的事項

には、「「障害認定日」とは、障害の程度の認定を行うべき日をいい、請求する傷病の初診日から起算して1年6月を経過した日又は1年6月以内にその傷病が治った場合においては、その治った日(その症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。)をいう。」と記載されています。
今回の事例では、症状固定と判断され、リハビリ終了の日が、「障害認定日」となります。
左上下肢の筋力低下(半減、著減、消失)、日常生活動作も左上肢下肢が必要な動作は殆ど、「×」か「△×」の判定であり、ほぼ妥当な評価かと思われました。
しかし、日常生活動作全22項目1個づつ丁寧に拝見すると、「歩く(屋内)」、「歩く(屋外)」が「△×」と記載されていました。
日常生活動作は、「補助用具を使用しない状態で判断」しなければいけません。
⇒ 障害基礎年金・障害厚生年金の診断書作成の留意事項

肢体障害の場合、日常生活動作は「補助用具を使用しない状態で判断」することが最重要ポイントです。
その方は、左下肢は内反が強く、装具がないと、左足が地面に着地するときに、小指側側面が着地してしまい、歩けません。
そのため、医師にそのことを説明差し上げ、「歩く(屋内)」、「歩く(屋外)」共に「×」と修正していただくことができました。

傷病名:脳出血で、申請を行い、無事障害基礎年金2級を受給できました。
身体が不自由になった後、ご主人とは別居になったそうです。
私との電話での会話で、弱音や愚痴をおっしゃる事は一度もありませんでしたが、日常生活の苦労は計り知れないものがあったはずです。
障害基礎年金2級受給決定の報を聞き、お役に立てて本当によかったとうれしく思いました。


躁うつ病:初診病院のカルテが無かった事例

2020/10/10 躁うつ病

1.病歴
その方(男性)は、一般の会社にお勤めでしたが、介護職に興味を持ち、資格取得に励み、あこがれていた介護職で頑張っていました。
しかし、会社で突如うつ状態となり休むことが多くなり、退職、転職を繰り返していました。
一方、そう状態のときは、金使いが荒くなり、多額の借金をしてしまうといったこともあり、奥様から離婚をせまられ、さらにうつが進み、希死念慮も現れました。
離婚後は、就労もできず、外出もできないような状態が続き、入院も勧められました。

2.無料相談~受任~障害厚生年金2級受給決定まで
遠方の方でしたが、インターネットで障害年金申請代行の社労士を探しておられ、岐阜の社労士を見つけ、ご連絡いただきました。
諸事情で複数の病院を転々とされていました。
1番目の受診医療機関は、15年ほど前であり、電話したところ、カルテも何も残っておらず、受診状況等証明書を書いてもらうことはできませんでした。
2番目の受診医療機関に問い合わせしたところ、1番目の受診医療機関からの紹介状も残っており、そのコピーをいただくことができました。
その紹介状には、最初の受診日も記載されており、初診証明はクリアしました。
現在受診中の医療機関に診断書を作成いただき、内容も妥当な診断書が出来上がりました。
躁うつ病で、裁定請求を行い、無事障害厚生年金2級を受給できました。
1人で外出できず、就労も全くできない状態であったため、大変感謝いただけました。

日本年金機構発表 障害年金業務統計(令和元年度決定分)

によれば、令和元年度障害(基礎・厚生)年金の裁定115,400件中、非該当とされたのは、14,366件(12.4%)です。
この数字が示すように、障害年金の取得は、必ず不支給リスクを伴うため、初診日のカルテが無いようなイレギュラーなケースでは、障害年金に詳しい社労士にご相談いただきたいと思います。


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