2024年3月

高次脳機能障害 審査請求、再審査請求を経て、再度の裁定請求で2級決定した事例

2024/03/18 障害年金総合

 

 

更新日 2024/7/6

1.経緯
その方(女性)は優秀で勉強熱心であり、教授達からも可愛がられていた、前途有望な女子大生でした。
教授から学生達が海水浴に誘われ、深夜車で出発し、日中海で遊び、帰宅は翌日の早朝となったそうです。
無理な日帰り旅行の計画がたたり、運転をしてくれていた友人が居眠りをして、交通事故を起こし、同乗していたその方は入院し、びまん性軸索損傷による高次脳機能障害を発症しました。

軸索損傷とは

高次脳機能障害とは

短期記憶を含む記銘力低下、注意機能低下、遂行機能低下があり、人の話を聞いてもすぐに忘れ、十分に理解できない、部屋の片づけができない、大学の授業はほぼ理解できない、それまでの温和な性格では考えられない言動があったり、道に頻繁に迷う、電車を利用できない、といった後遺症が日常的に見られるようになりました。 
その方の母親が1人で医師に診断書を書いてもらい、裁定請求をしたところ、不支給の結果となり、母親より当事務所に相談がありました。

 

2.審査請求、再審査請求
まず、審査請求(不服申立)のご依頼があり、裁定請求で提出した資料コピーをすべて準備してもらいました。

審査請求とは

裁定請求で添付された、診断書を拝見すると、複数不備な部分がありましたが、特に日常生活能力の判定が実態とかけ離れていることがわかりました。
日常生活能力の判定には、7項目(食事、清潔保持、金銭管理買い物、コミュニケーション対人関係、通院服薬、安全保持危機対応、社会性)があります。
これらは「できる~できない」まで4段階で評価しますが、1人暮らしをした場合を想定し、「できる~できない」を評価しなければいけません。

障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領9ページ 【「2 日常生活能力の判定」及び「3 日常生活能力の程度」】参照

その方は1人暮らしを想定すると、7項目すべて 1人では何もできず、必ず援助が必要です。
診断書は、医師が母親にヒアリングをして、評価したそうですが、医師、母親共に、1人暮らしを想定した評価をしなければならないことをご存知でありませんでした。
その事を主治医にご説明差し上げた所、非を認め、診断書の再作成に応じていただくことになりました。
再作成いただいた診断書は、1人暮らしを想定した場合は必ず援助が必要な評価となっていました。
その診断書を添付し、審査請求を行いましたが、棄却でした。
社会保険審査官が作成した決定書には、「審査請求書時に提出された診断書は原処分後に作成されたものであるため、採用できない。」とのことでした。
どんな理由であろうが、原処分(裁定請求の決定)後に作成された診断書は参考にしないというスタンスでした。
その後、再審査請求では、交通事故後実施された脳神経外科の検査結果などをかき集め、この検査結果からは到底1人での生活は不可能だという主張をしましたが、残念ながら棄却でした。

 

3.再度の裁定請求
再審査請求をした後、結果が出るのに、7~8か月かかるため、再審査請求が棄却となった場合にそなえ、再度の裁定請求も並行にすることにしました。

再審査請求の棄却の結果が出た後、しばらくして、再度の裁定請求の結果が届きました。
結果は、障害基礎年金2級でした。
お母様が裁定請求をして不支給結果となり、ご依頼を受けてから、審査請求、再審査請求を経て、再度の裁定請求の結果が出るまで、1年半かかりましたが、ようやく獲得した障害年金でした。
明るい未来を信じて疑わなかった女子大生の娘さんが突如として、他人の不注意から、1人で生活できない障害者となり、お母様は絶望していましたが、1年半を経て年金が認められ、ほっとされ何度も感謝の言葉をいただきました。
1年半の間もらえなかった年金額の損失も高額になります。
医師は傷病を治すことが仕事であり、日々その為の勉強に時間を費やしています。
診断書の記載ルールは社労士程は詳しくない方が殆どです。
医師に診断書を書いてもらい、不備がないかどうか、障害状態が妥当に表現されているかどうか、年金が通りそうかどうか、等不安があるようでしたら、是非障害年金を専門にしている社労士にご相談いただくことをお勧めします。