2020年11月

統合失調症:10年ぶりの再挑戦で2級が認められた事例(岐阜・名古屋周辺域)

2020/11/28 統合失調症

1.病歴
その方は14年程前、ご主人と不仲になり、不眠、希死念慮も出てきて、精神科を受診しました。
その後も記憶力が落ちたり、家事ができなくなっても、ご主人は病気への理解はなく、怒鳴られ、症状はますます悪化しました。
妄想、幻聴、幻覚の症状も現れるようになり、統合失調症と診断されました。

2.無料相談~裁定請求~障害基礎年金2級受給決定
その方は岐阜・名古屋周辺域の障害年金申請に詳しい社労士をインターネットで調べ、私に無料相談の電話がありました。
ご自宅近くのファミレスでの打ち合わせを提案しましたが、他人に見られるのは嫌だということで、それほど近くではありませんが、時間をかけて弊事務所を訪問されました。
14年程前の発病から、現在までの病歴、通院歴を伺いました。
10年程前にご自分で、障害年金の申請をして、不支給とされたとのことでした。
5年程前から就労はできなくなりました。
最近、物忘れが激しくなり、家事も満足にできず、統合失調症特有の症状(妄想、幻聴、幻覚)もあり、とても自分で申請できないので、再度の申請をお願いしたいということでした。
いろいろ熱心にお話いただきましたが、コミュニケーションにも問題があり、込み入った話になると、何度も何度も同じ話の繰り返しになり、なかなか話が前に進まないといったことはありましたが、時間をかけてゆっくり話を伺いました。
10年程前に裁定請求したときの書類一式コピーも年金事務所に取り寄せてもらいました。
ご本人の申請書類の文字は、現在の話しぶりからは想像できないほど、きれいな文字と文章であり、本来は聡明な方であったことがうかがえましたが、10年の歳月で統合失調症が悪化し、今では当時のような文章の作成は難しく思われました。
日本年金機構の「障害認定基準 精神の障害」は、統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」、「気分(感情)障害」、「症状性を含む器質性精神障害」、「てんかん」、「知的障害」、「発達障害」に区分され、区分毎に例示が示されています。

統合失調症2級の例示には、「残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの」と記載されています。
それらの例示内容が実際の症状にあてはまるのであれば、その内容をしっかり診断書に盛り込んでもらう必要があります。
それに留意し、現在通院中の医療機関に診断書を作成していただいたところ、少し記載不足の部分があり、根拠を示し、医療機関に修正をお願いしたところ、快く修正に応じていただけました。
傷病名:統合失調症で、年金事務所で裁定請求手続きを行い、障害基礎年金2級が認められました。
「久納さんにお願いして良かったです。ありがとうございます。次回更新も宜しくお願いします。」と、10年ぶりの再挑戦での障害年金受給決定を喜んでおられました。

 


慢性膵炎:審査請求(不服申立)で遡及2級が認められた事例(相当因果関係の有無)

1.病歴
その方は約8年前、お腹が痛くなり、入院、急性アルコール膵炎と診断されました。
その後飲酒、タバコは禁止され、5年間体調はよく、サラリーマンを問題なく続けていました。
約2年前再びお腹が痛くなり、入院、慢性膵炎と診断されました。
かなり重症であり、膵管にステントを挿入し、今後定期的に交換が必要でした。
立ち上がり体を動かすと、めまい、立ち眩みがあるため、1日の大半を横になって過ごしていました。
また沈痛目的で医療用麻薬も処方されていました。

2.無料相談~裁定請求~却下決定~審査請求~障害厚生年金遡及2級受給決定
その方は障害年金専門の社労士をインターネットで調べ、遠方でしたが私に無料相談の電話がありました。話をするだけでも辛そうでした。
約8年前の急性アルコール膵炎の初診時は、保険料納付要件を満たしませんでした。
約2年前の慢性膵炎の初診時は、厚生年金加入中であり、保険料納付要件を満たしていました。いずれかが初診となります。
その方は医師より、約8年前の急性膵炎と約2年前の慢性膵炎は無関係だと聞いていたため、約2年前の慢性膵炎の初診日を今回申請の初診日として、裁定請求することにしました。
しかし、万一日本年金機構で急性膵炎と慢性膵炎に関係があると判断された場合に備え、社会的治癒の申立も合わせてすることにしました。
急性膵炎から慢性膵炎の間の約6年間会社に勤務していたときの同僚2名に、元気に勤務していたことを申立していただきました。
約2年前の慢性膵炎の初診日を今回申請の初診日として、傷病名:慢性膵炎として認定日請求をしました。
それには、以前の同僚2名の申立書も添付しました。
数か月後、慢性膵炎の初診日が約2年前と認められないとして、却下通知が届きました。
その方に相談したところ、医師より、約8年前の急性膵炎と約2年前の慢性膵炎は無関係だと聞いていたのは間違いないということだったため、不服申立(審査請求)をすることにしました。
主治医に、約8年前の急性膵炎と約2年前の慢性膵炎に関連はないという見解を意見書に書いていただき、それをメインに厚生局に審査請求しました。
万一約8年前の急性膵炎と約2年前の慢性膵炎は相当因果関係があるとされた場合にそなえ、再び、社会的治癒の主張も繰り返しました。
国民年金・厚生年金保険の障害認定基準の第1 一般的事項 2 傷病

には、「(2)「起因する疾病」とは、前の疾病又は負傷がなかったならば後の疾病が起こらなかったであろうというように、前の疾病又は負傷との間に相当因果関係があると認められる場合をいい、負傷は含まれないものである。」と相当因果関係に関する記載があります。
その後、日本年金機構からカルテの提出を求められ、本当に両者に関連がないか調査されました。
その後、日本年金機構から処分変更の通知があり、障害厚生年金2級が認められました。
主治医に意見書を作成していただいたものの、カルテを精査され、少し心配していましたが、何とか初診日が認められほっとしました。
その方は、1日の大半を横になって過ごしており、仕事もできなかったので、障害厚生年金遡及2級受給が決定し、高額な遡及分の入金もあり、非常に喜んでいただけました。


うつ病:審査請求(不服申立)で遡及2級が認められた事例(処方薬の関係)

2020/11/07 うつ病

1.病歴
その方は28年前に電車に乗っているときに、動悸、震え、不安感があり、近所のA内科を受診し、不安神経症と診断されました。
その後別のBクリニックを紹介され、約1年9ヶ月受診しました。
4人家族で生活費もままならず、生活保護を検討するほど経済的に窮し、もう限界と思った瞬間にパニック症状が出るようになり、家事、炊事、通院も含め一人での外出もできなくなりました。
その後、友人の勧めで、パニック障害に詳しいCクリニックに転医しました。
最初は、近所の友人にそのクリニックに連れて行ってもらい、受診していました。
夫からは、「何で1人で病院に行けないんだ!」と怒鳴られ、もう離婚し生活保護に入ろうと、医師にその話をすると、「旦那さんを連れてきなさい」と言われ、次回受診時、医師がご主人に、「奥さんは見た目では分からないけど、死の苦しみなんですよ」と言ってくれて、涙が溢れて止まらなかったそうです。
そのクリニックに約26年間毎月通院しましたが、その中で1人で受診できたのはわずか数回で、後は、近所の友人とご主人に連れて行ってもらったそうです。
約26年間就労も殆どできませんでした。

2.無料相談~裁定請求~障害基礎年金事後2級受給決定~審査請求~障害基礎年金遡及2級受給決定
その方は障害年金に詳しい社労士を探して、まず遠方ながら私に無料相談がありました。
以前転倒し、脳脊髄液減少症の疑いで脳外科にもかかっており、障害年金を申請したいとのことでした。
しかし、精密検査で脳脊髄液減少症の確定診断は得られず、28年前から患っているうつ病で障害年金を申請する方針としました。
うつ病の初診はA内科ですが、28年前のカルテは既に残っておらず、2番目に行ったBクリニックは既に廃院でした。
しかし、3番目に行ったCクリニックで、A内科、Bクリニックの受診歴を把握していたため、初診証明は何とかなりました。
初診日の1年半後の障害認定日頃は、Bクリニックを受診していました。
Cクリニックに最初に受診したのは、初診日から1年11か月後でした。
既に廃院となっているBクリニックで診断書を書いてもらうことはできないため、障害認定日時点の診断書については、やむをえずCクリニックに最初に受診した時点の診断書をCクリニックに書いてもらいました。
また、裁定請求(現在)時点の診断書もCクリニックに書いてもらい、両者の診断書を添え、うつ病で認定日(遡及)請求手続きを年金事務所でしました。
その結果、裁定請求(現在)時点は障害基礎年金2級が認められました。
しかし、障害認定日時点は、障害年金2級に該当しないとして、不支給決定となりました。
不幸中の幸いだったのは、障害年金2級に該当しないとした「棄却」決定であり、認定できない「却下」決定ではなかったことです。
障害認定日時点の診断書は原則初診日から1年半後から1年9ヶ月後までの3か月間の現症日の診断書であることが必要です。
請求するときに必要な書類等 医師の診断書

しかし、初診日から1年11か月後の診断書でも、認定できない「却下」決定ではなく、認定(障害の程度を判定すること)はできるが、障害年金2級に該当しないとした「棄却」決定だったのです。
障害認定日時点、裁定請求(現在)時点共に、傷病名は「うつ病」、日常生活能力の程度は「4」であり、本来両者2級が認められるべきです。
厚生労働省の保有個人情報開示請求

で、障害状態認定調書を取り寄せました。
すると、障害認定日時点、即ちCクリニックに最初に受診した時点の診断書の処方薬には、抗不安薬のみで、抗うつ剤が無いことで、軽度と見られたことが原因とわかりました。
Cクリニックに最初に受診したときはまだ、抗うつ剤が処方されていなかったのです。
(しばらくして、抗うつ剤が処方されるようになりました。)
その方と相談の上、遠方の厚生局に対して、審査請求をすることにしました。
Bクリニックは廃院のため、どうにもならず、Cクリニックの初診頃のカルテを取り寄せました。
すると、前医(Bクリニック)での受診状況を本人に聞き取りした内容が1頁記載されていました。
その中に、2行だけ、前医Bクリニックでの処方薬の記載があり、抗うつ剤名と抗不安薬名の記載がありました。
前医Bクリニックで抗うつ剤処方があることがわかり、それをメインに審査請求で、遠方の厚生局の社会保険審査官に主張し、障害基礎年金遡及2級が認められました。
障害認定日は約26年前であり、26年分の年金がもらえるといいのですが、
年金の時効

があり、最近の5年分しか年金をもらうことはできません。それでもかなり高額な一時金をもらえることになり、お電話で喜びの声を頂戴しました。