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うつ病で障害基礎年金2級を取得した事例(社会的治癒を利用して請求したが、返戻)

2024/09/20 障害年金総合

                        更新日時 2024/9/20

1.病歴

その方(女性)は平成9年育児、ご主人との関係の悩みから、A病院を受診し、抑うつ状態と診断されました。(その時は国民年金に加入していました。)
その後平成9年~11年、Bクリニックを受診しました。
平成11年~18年は、育児をしながら問題なくご主人の店で働いていました。
平成18年~22年は、大会社の営業をし、かなり収入もあり、同僚と食事やカラオケで楽しく過ごしていました。
しかし、平成22年同僚とトラブルがあり、不安感が強くなり、Cクリニックを受診しました。(その時は厚生年金に加入していました。)
デパス(精神安定剤)を処方されました。平成25年退職しました。

平成30年、親友が亡くなり、独言が増え、Cクリニックを再受診、主治医の話では、言うことが支離滅裂であったとのことです。
以後、亡くなった友人が自宅を訪ねてくる幻覚、歯医者に行くと歯を全部抜かれてしまうという妄想があり、歯医者のことを考えると寝られなくなり、死のうとまで考えました。
拒食で5kg痩せ、風呂にも入れなくなりました。
令和2年、D病院を受診し、入院を勧められましたが、入院を拒否し、その後、希死念慮が続くようになり、自殺未遂までしてしまいました。
D病院では、うつ病と診断され、レクサプロ、ミルタザピン等を処方されました。
レクサプロは選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)に属する一般的な抗うつ剤です。
ミルタザピンはノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ剤(NaSSA) であり、従来のSSRIやSNRIとは異なる作用機序であり、比較的短期(約1週間)で効果が現れます。 

 

2.弊所への相談、障害厚生年金の請求、返戻後障害基礎年金への変更

令和2年、弊所に障害年金の相談があり、ヒアリングしたところ、次のような訴えがありました。
自分の精神の不調の最大の原因は、歯医者であり、自殺まで考えた。
人と約束すると、負担が大きくなり寝られなくなるため、一切人と約束しない。
人付き合いは疲れるので、一切しない。大声で独り言をよく言う。奇声が多い。夜中もよく1人でしゃべっている。
道路を歩いていても大声でしゃべり続け、奇異な目で見られる。
冷静に人と会話することができず、興奮したり、話がそれることが多い。
私がヒアリングしていると、先日保健所に行った時に対応してくれた職員が精神障害者(自分)に対して幼稚園児のような扱いをすることに腹が立ち、怒りが治まらないという話が止まらなくなったりしました。
知らない間に借金が増え驚いたが、死ねば保険金が出るから、最悪死ねばいいとも仰っていました。
平成9年~11年、A病院、Bクリニック受診後、平成22年までの11年間は、ご主人の店で問題なく働き、その後大会社の営業をしっかりこなし、充実した日々であり、全く精神系の医療機関の受診はありませんでした。
オーソドックスに、平成9年A病院初診で裁定請求をすると、障害基礎年金、平成22年Cクリニック初診で裁定請求をすると、障害厚生年金であり、同じ2級の場合、大幅に年金額が変わってきます。
平成11年~22年の11年間は、期間の長さ、就労内容から、間違いなく社会的治癒にあたると考えられ、「社会的治癒」を主張し、障害厚生年金で請求することにしました。
しかし、念のためどちらの初診日に転んでもいいように、A病院、Cクリニック両者で受診状況等証明書を作成してもらい、D病院で診断書を作成していただきました。
傷病名:うつ病で充分2級は取得できる診断書でした。
11年間という期間は、社会的治癒として最低限必要とされる5年間と比較すると充分な期間です。
また、その間在籍した大会社の「在籍証明書」、大会社で同僚だった方の「第三者証明」、当時の「確定申告資料」も揃え、社会的治癒の主張としては、完璧であり、自信を持って、障害厚生年金請求をしました。
弊所では、従来多くの社会的治癒を利用した裁定請求をして、ほぼすべて認められてきました。
今回も自信を持っていましたが、意外なことに返戻(差し戻しの意味)がありました。
日本年金機構は、「初診日は平成9年A病院である。初診日を修正して、障害基礎年金への変更するように」というものでした。
日本年金機構の提案は断り、審査請求(不服申立)に進めば、充分勝てるはずと思い、その方と相談しました。
しかし、その方は、審査請求、その後の再審査請求で年金をもらえる時期が遅くなることは避けたいとのことで、日本年金機構の提案通り、初診日を修正して、障害基礎年金に変更することになりました。
不本意ながら変更手続きを行い、その後無事障害基礎年金2級受給が決定しました。
従来弊所が請求して、認められた社会的治癒期間としては、5年~7年が多かったです。
今回は、11年という充分な社会的治癒期間であり、その間の就労内容、根拠資料も申し分なかったと思います。
従来多くの社会的治癒を利用した裁定請求の中で、最も社会的治癒が認められやすいケースであったのに、なぜ今回に限って返戻があったのか謎です。
どうも日本年金機構の認定者によって、認定方法にばらつきがあるとしか考えられない、すっきりしない結末となりました。

 

うつ病の他の事例はこちら


慢性疲労症候群で再審査請求を経て、統合失調症で障害厚生年金3級を取得した事例

2024/09/05 障害年金総合

更新日時 2024/9/5

1.経緯

その方(女性)は平成23年微熱、咳が止まらない、寝汗の症状があり、Aクリニックにかかりました。
「急性気管支炎」とされ、その後も微熱、頭痛、倦怠感、関節痛が続くようになりました。
平成25年~28年、同様の症状が続き、乳がん、精神病、子宮がんかもしれないと思い、Aクリニック、B内科、C耳鼻科、D心療内科を受診しましたが、納得のいく診断はされませんでした。
その後、リウマチを疑い、E病院を受診し、関節痛を訴えても、「心の持ちようの問題」などと理不尽なことを言われました。
平成29年、微熱、倦怠感、関節痛に加え、激しい腹痛があり、F病院にかかりましたが、異常なしとされ、痛み止めの薬が処方されただけで、症状はよくなりませんでした。
F病院では、異常なしという検査結果を聞くまで1カ月かかり、さらに他の医療機関を紹介してくれることもありませんでした。
やむをえず、自力でネットで自分の症状にあてはまる病気を探し、慢性疲労症候群という傷病が一番近いと思い、Gクリニックに慢性疲労症候群の専門医がおられることも調べ、平成29年2月Gクリニックを受診しました。
そこでは、本人の予想通り慢性疲労症候群と診断されました。
その頃は、家事や買物もできず、日中殆ど寝たきりとなっていました。

 

2.慢性疲労症候群で、裁定請求、審査請求、再審査請求、統合失調症で裁定請求
平成29年3月、慢性疲労症候群で障害年金を申請したいので、お手伝いいただきたいと、本人より当事務所に相談があり、次のように進めました。

■慢性疲労症候群、線維筋痛症の裁定請求
平成23年微熱、咳が止まらない、寝汗の症状があり、受診した、Aクリニックが初診と思われ、Aクリニックで受診状況等証明書を作成いただき、Gクリニックで診断書を作成いただきました。
診断書の傷病名は「慢性疲労症候群、線維筋痛症」でした。
※ 慢性疲労症候群とは

※ 慢性疲労症候群 認定事例(日本年金機構)

※ 線維筋痛症とは

※ 線維筋痛症  認定事例(日本年金機構)

診断書の「傷病の原因又は誘因」欄は、Aクリニックの「急性気管支炎」、「傷病の発生年月日」欄は、Aクリニックを受診した「平成23年頃」、「現在までの治療の内容、期間、経過」欄には、AクリニックからGクリニックまでの経過が細かく記載されていました。
Aクリニックの「急性気管支炎」と「慢性疲労症候群、線維筋痛症」の間に相当因果関係があるかどうかがポイントとなるため、「傷病の原因又は誘因」欄は、Aクリニックの「急性気管支炎」と記載されたことで、初診日はAクリニック受診の平成23年に間違いないと確信しました。
病歴就労状況等申立書に、AクリニックからGクリニックまでの経過を詳しく記述し、平成29年7月裁定請求したところ、初診日は平成23年Aクリニック受診日ではないとのことで、平成29年11月、不支給結果の通知が届きました。
障害状態認定表を開示請求したところ、認定表には、「急性気管支炎」と「慢性疲労症候群」、「線維筋痛症」には、全て相当因果関係は無いと記載がありました。
初診日は、慢性疲労症候群、線維筋痛症と確定診断された、Gクリニック受診日であるとのことでした。

 

■慢性疲労症候群、線維筋痛症の審査請求

納得がいかないため、審査請求をすることにしました。
Aクリニック、B内科のカルテ開示請求を行い、平成23年以降、微熱、頭痛、倦怠感、関節痛、精神神経症状、その他の症状の経過を時系列にまとめ、カルテコピーとともに、時系列表を審査請求書に添付しました。
主な主張は次の2点です。
・Gクリニックの診断書 「傷病の原因又は誘因」欄は、Aクリニックの「急性気管支炎」、「傷病の発生年月日」欄は、Aクリニックを受診した、「平成23年頃」と記載されている。
・Aクリニック、B内科のカルテには、慢性疲労症候群の症状(微熱、頭痛、関節痛、精神神経症状)の記載がある。
したがって、平成23年受診した、Aクリニックが初診であると訴えました。
審査請求書の結論は、次のように結びました。
「回顧的にみれば、明らかに慢性疲労症候群の症状があるにもかかわらず、どの病院でも納得できる診断がないため、請求人自ら乳がん、精神病、リウマチ、子宮がんを疑い、病院を駆けずり回ったが、正しい病名を診断してくれる病院は無かった。最終的には請求人自ら「慢性疲労症候群」という病気の症状が自分の症状に当てはまることを探し当て、慢性疲労症候群の専門医を受診するに至った。(病歴就労状況等申立書より)
多くの医師であっても慢性疲労症候群、線維筋痛症といった確定診断がなされにくい難病において、確定診断前の症状の考慮なく、初めて確定診断された病院受診日を単純に初診日と判断するのは、失当である。」
なお、日本年金機構のホームページには、初診日の1例として、次のような説明がされています。
「障害の原因となった傷病の前に相当因果関係があると認められる傷病があるときは、最初の傷病の初診日が対象傷病の初診日」

※ 出典 障害年金講座 「初診日とは」 日本年金機構

平成30年1月、厚生局に審査請求を行いましたが、同年6月、棄却通知が届きました。

 

■慢性疲労症候群、線維筋痛症の再審査請求

本人、私共に、納得がいかないため、再審査請求をすることにしました。
審査請求書での主張と共に、次の3点の主張を追加しました。
・日本年金機構の「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」内の初診日の定義から、主張する初診日に間違いはない。
 ※ 日本年金機構の「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」一般的事項 初診日

・医学書院 医学大辞典 第2版の慢性疲労症候群の説明から、平成23年~平成29年の症状は、慢性疲労症候群の特徴に間違いない。
・リウマチ情報センターのホームページ内、「線維筋痛症診療ガイドライン 2017」内の線維筋痛症の説明から、平成23年~平成29年の症状は、線維筋痛症の特徴に間違いない。
したがって、平成23年受診した、Aクリニックが初診であると訴えました。
再審査請求書の結論は、次のように結びました。 
「請求者本人が6か所の医療機関を経て、自覚症状から慢性疲労症候群を疑い、専門医がいるGクリニックを探し当て、受診に至ったのは、病歴・就労状況等申立書に記載した通りである。
請求者がそのような医療機関を見つけることが出来なければ、初診日がさらに未来にずれこんでいく不合理はあってはならないことであり、審査会におきましては大義ある決定を下されんことを切に望みます。」
平成30年7月、社会保険審査会に再審査請求を行いましたが、平成31年2月、棄却通知が届きました。

 

■統合失調症の裁定請求 障害厚生年金3級決定

平成30年1月審査請求後の平成30年4月頃、症状が変化してきました。
従来の症状に加え、幻聴、幻覚、妄想の精神症状が強く出るようになりました。
具体的には、次のような症状が出始めました。
・多くの人に話しかけられる幻聴
・人の顔が浮かんでいる幻覚
・自宅に宇宙人が襲いに来るという妄想
そのため、D心療内科を5年ぶりに再受診したところ、「統合失調症」と診断されました。
(平成25年、最初にD心療内科を受診した際は、「軽いうつ病」と診断されました。)
令和2年3月、ご主人より新たに裁定請求の依頼がありました。
平成25年、最初にD心療内科を受診した日付を初診日とし、D心療内科で「統合失調症」の診断書を作成いただき、令和2年4月、裁定請求をし、無事同年11月障害厚生年金3級が決定しました。

 

■まとめ

平成29年3月、当事務所に相談があった慢性疲労症候群、線維筋痛症では、残念ながら裁定請求、審査請求、再審査請求すべて不支給、棄却でしたが、令和2年11月統合失調症で何とか障害厚生年金3級受給となりました。
日本年金機構では、慢性疲労症候群、線維筋痛症の複数ある症状のうち、「最も代表的な」症状が受診状況等証明書に記載されていなければ、初診と認めない傾向にあります。
「最も代表的な」症状があっても、患者が他の強く現れた症状を訴え、「最も代表的な」症状を医師に訴えなければ、カルテに残らず、受診状況等証明書にも記載されないことになります。
そのようなケースでは、初診と認められないことになります。
一方、精神障害については、今回のケースのように、初診日は「軽いうつ病」でも、ほぼ間違いなく「統合失調症」の初診日とされます。
したがって、いつの受診が初診日かの判断は非常に難しい場合があり、判断に迷われる場合は、経験豊富な社会保険労務士に相談されることをお勧めします、

 

 

 

 


高次脳機能障害 審査請求、再審査請求を経て、再度の裁定請求で2級決定した事例

2024/03/18 障害年金総合

 

 

更新日 2024/7/6

1.経緯
その方(女性)は優秀で勉強熱心であり、教授達からも可愛がられていた、前途有望な女子大生でした。
教授から学生達が海水浴に誘われ、深夜車で出発し、日中海で遊び、帰宅は翌日の早朝となったそうです。
無理な日帰り旅行の計画がたたり、運転をしてくれていた友人が居眠りをして、交通事故を起こし、同乗していたその方は入院し、びまん性軸索損傷による高次脳機能障害を発症しました。

軸索損傷とは

高次脳機能障害とは

短期記憶を含む記銘力低下、注意機能低下、遂行機能低下があり、人の話を聞いてもすぐに忘れ、十分に理解できない、部屋の片づけができない、大学の授業はほぼ理解できない、それまでの温和な性格では考えられない言動があったり、道に頻繁に迷う、電車を利用できない、といった後遺症が日常的に見られるようになりました。 
その方の母親が1人で医師に診断書を書いてもらい、裁定請求をしたところ、不支給の結果となり、母親より当事務所に相談がありました。

 

2.審査請求、再審査請求
まず、審査請求(不服申立)のご依頼があり、裁定請求で提出した資料コピーをすべて準備してもらいました。

審査請求とは

裁定請求で添付された、診断書を拝見すると、複数不備な部分がありましたが、特に日常生活能力の判定が実態とかけ離れていることがわかりました。
日常生活能力の判定には、7項目(食事、清潔保持、金銭管理買い物、コミュニケーション対人関係、通院服薬、安全保持危機対応、社会性)があります。
これらは「できる~できない」まで4段階で評価しますが、1人暮らしをした場合を想定し、「できる~できない」を評価しなければいけません。

障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領9ページ 【「2 日常生活能力の判定」及び「3 日常生活能力の程度」】参照

その方は1人暮らしを想定すると、7項目すべて 1人では何もできず、必ず援助が必要です。
診断書は、医師が母親にヒアリングをして、評価したそうですが、医師、母親共に、1人暮らしを想定した評価をしなければならないことをご存知でありませんでした。
その事を主治医にご説明差し上げた所、非を認め、診断書の再作成に応じていただくことになりました。
再作成いただいた診断書は、1人暮らしを想定した場合は必ず援助が必要な評価となっていました。
その診断書を添付し、審査請求を行いましたが、棄却でした。
社会保険審査官が作成した決定書には、「審査請求書時に提出された診断書は原処分後に作成されたものであるため、採用できない。」とのことでした。
どんな理由であろうが、原処分(裁定請求の決定)後に作成された診断書は参考にしないというスタンスでした。
その後、再審査請求では、交通事故後実施された脳神経外科の検査結果などをかき集め、この検査結果からは到底1人での生活は不可能だという主張をしましたが、残念ながら棄却でした。

 

3.再度の裁定請求
再審査請求をした後、結果が出るのに、7~8か月かかるため、再審査請求が棄却となった場合にそなえ、再度の裁定請求も並行にすることにしました。

再審査請求の棄却の結果が出た後、しばらくして、再度の裁定請求の結果が届きました。
結果は、障害基礎年金2級でした。
お母様が裁定請求をして不支給結果となり、ご依頼を受けてから、審査請求、再審査請求を経て、再度の裁定請求の結果が出るまで、1年半かかりましたが、ようやく獲得した障害年金でした。
明るい未来を信じて疑わなかった女子大生の娘さんが突如として、他人の不注意から、1人で生活できない障害者となり、お母様は絶望していましたが、1年半を経て年金が認められ、ほっとされ何度も感謝の言葉をいただきました。
1年半の間もらえなかった年金額の損失も高額になります。
医師は傷病を治すことが仕事であり、日々その為の勉強に時間を費やしています。
診断書の記載ルールは社労士程は詳しくない方が殆どです。
医師に診断書を書いてもらい、不備がないかどうか、障害状態が妥当に表現されているかどうか、年金が通りそうかどうか、等不安があるようでしたら、是非障害年金を専門にしている社労士にご相談いただくことをお勧めします。

 


自閉症スペクトラム障害 日常生活能力の判定が全て「できる」と診断された事例

2024/02/24 障害年金総合

更新日時 2024/2/24

1.経緯
その方(女性)は、生後半年で、てんかん発作があり、医療機関への通院を続けましたが、幼稚園頃まで発作が続きました。
小学校では不登校があり、心療内科への通院を始め、神経症と診断されました。
中学は問題ありませんでしたが、高校、大学、専門学校は、人間関係の問題で、中退、転校を繰り返しました。
2度結婚をしましたが、いずれも家事ができず、喧嘩続きで、離婚となりました。
仕事も、同僚にいじめられたり、退職勧奨があり、2か月以上続くことはありませんでした。
心療内科も自分に合うところがなく、転医が続きました。
ある病院の精神科にかかり、初めて自閉症スペクトラム障害と言われ、人間関係が続かない、また家事ができない原因がわかったと言います。

 自閉症スペクトラム障害とは

2.医師が変わり、障害基礎年金2級決定 
最初、その方の母親より、相談がありました。
娘さんが、数えきれないほど転職を繰り返し、現在の病院で自閉症スペクトラム障害とわかったものの、主治医が障害年金の診断書作成に消極的とのことでした。
最初他の社労士に相談したところ、自閉症スペクトラム障害について詳しくないため、当事務所に相談となり、契約となりました。
初診日は、生後半年後のてんかんの受診か小学生の神経症の受診か迷うところでした。
主に小学生の神経症の受診を初診日とし、予備的に生後半年後のてんかんの受診を初診日とし、両者の受診状況等証明書を取得しました。
現在の病院の、障害年金の診断書作成に消極的な医師に、病歴、日常生活の不便、「WAIS-Ⅲ検査」結果をまとめた、診断書作成依頼書を提出し、診断書を作成してもらったところ、驚くことに、殆ど全く問題なく生活できる人の日常生活能力の評価でした。
さらに驚くことに、以前その病院で検査された「WAIS-Ⅲ検査」の結果が記載されていなかったのです。
そのため、本人と共に受診して、日常生活能力、及び「WAIS-Ⅲ検査」の説明を主治医にさせていただきました。
その医師より「WAIS-Ⅲ検査」結果の不記載について詫びがあったものの、日常生活能力の評価については正当性を主張されました。ご本人はその場で泣きだしました。
カルテに日常生活の記載がないから、全てできるという評価のようですが、日常生活に全く問題ない人が毎月精神科に通院するでしょうか?
カルテに記載が無ければ、日常生活のヒアリング、又は問診票、又は社労士等代理人の提供資料で確認するべきでないでしょうか?
医師の方から主治医交代の要否を尋ねられたため、私と本人は即交代をお願いし、後日同病院の別の医師の診察を受け直しました。
その後、新たな医師による、実態にあった診断書ができあがりました。
裁定請求を行い、無事障害基礎年金2級を取得できました。

主治医交代で若干裁定請求手続きは遅れましたが、主治医交代前の診断書で障害年金受給は不可能でしたので、ご本人、お母さまは大変喜ばれました。


2度の脳梗塞で、4回の返戻後障害厚生年金2級を取得した事例

2024/01/08 肢体障害

                                          更新日時 2024/1/8

1.経緯

その方は平成23年、脳梗塞を発症、A病院入院、その後B病院でリハビリ後、左半身は不自由でしたが、デスクワーク限定で職場に復帰しました。

B病院でリハビリ後の服薬治療はCクリニックに通院していましたが、平成28年、2回目の脳梗塞を発症、A病院に入院後、左半身の不自由さは増し、職場復帰はできませんでした。

2.無料相談~4回の返戻後、障害厚生年金2級決定 

その方は、2回目の脳梗塞の約1年後、当事務所に相談がありました。
裁定請求は、平成23年、1回目の脳梗塞の約半年後現症日の診断書をB病院で作成いただき、平成28年、2回目の脳梗塞の約1年2月後現症日の診断書をA病院で作成いただき、障害認定日+事後重症請求の手続きをしました。
当初、1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞は同一傷病として、請求しました。
その後、日本年金機構より、4回の返戻(へんれい)がありました。

■返戻(1回目)の内容

 A病院医師への問い合わせ:
 「2回目の脳梗塞で症状が悪化しているが、この原因は再発ですか。それとも廃用性障害ですか。」
 といった問い合わせでした。

■返戻(1回目)に対する対応 

 A病院医師に、問い合わせに対する回答(下記)を書いていただき、日本年金機構に提出。
 「MRI上明らかな再発は認められないが、TIA、画像で検出しにくいレベルの脳梗塞の可能性。」
 そのため、廃用性障害ではなく、再発であることを示すことができました。

■返戻(2回目)の内容
 1回目の脳梗塞後のB病院、Cクリニックでのリハビリ、治療状況の調査のため、B病院医師、Cクリニック医師に対して、問い合わせがありました。

■返戻(2回目)に対する対応
 B病院医師、Cクリニック医師に回答を書いていただき、日本年金機構に提出。
 1回目の脳梗塞後、適切なリハビリ、治療が行われていたことを示せました。

■返戻(3回目)の内容
 「1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞は別傷病と判断されました。
 また、1回目の脳梗塞の約半年後現症日のB病院の診断書は障害認定日の診断書と認められないと判断されました。
 そのため、1回目の脳梗塞初診日の1年半後の診断書を提出してください」とのことでした。
 提出できない場合は、1回目の脳梗塞後の症状は今回の裁定請求の認定には、プラスにならず、マイナスになることを意味していました。

■返戻(3回目)に対する対応
 1回目の脳梗塞の約半年後、B病院で障害者手帳の診断書が作成され、それには「症状固定」の記載があり、それを根拠に1回目の脳梗塞の約半年後、B病院での(年金の)診断書に「症状固定」の追記をB病院の医師にしていただき、日本年金機構に提出。

 1回目の脳梗塞の約半年後現症日の、B病院での(年金の)診断書は障害認定日の診断書として有効であることを示せました。

■返戻(4回目)の内容
 「1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞は相当因果関係がないと判断されました。
 裁定請求書の請求傷病を、1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞の2傷病として、それぞれ症状固定したとして、請求書を修正してください。」とのことでした。

■返戻(4回目)に対する対応
 A病院に対し、2回目の脳梗塞の約1年2月後現症日の診断書に、「症状固定」の追記をしていただきました。
 また、請求傷病を、1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞の2傷病とし、それぞれ症状固定したとして、裁定請求書を修正し、日本年金機構に提出。

 

その結果、非常に時間がかかりましたが、障害厚生年金2級の受給決定しました。
結果的には、「初めて2級」の扱いとなり、1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞の併合の処理があり、無事障害厚生年金2級が決定しました。

初めて2級とは 障害認定基準 2ページ目

B病院での診断書に「症状固定」の追記をしていただけたので、「初めて2級」の扱いとなり、助かりました。
仮に「症状固定」の追記をしていただけない場合は、1回目の脳梗塞後の診断書の症状が差引認定の対象となり、等級2級を得られなかった可能性がありました。

差引認定とは 障害認定基準 109ページ目

当初1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞は同一傷病として、裁定請求しましたが、両者には相当因果関係がなく、別傷病とされました。
そのため、1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞の障害が併せて認定される(初めて2級)か、2回目の脳梗塞の障害の状態から1回目の脳梗塞の障害の状態を差し引かれ認定されるかという微妙な問題になりました。
1回目の脳梗塞後約半年後現症日の診断書が症状固定と認められたため、「初めて2級」として併合認定された結果、2級となりました。
脳梗塞が2回あり、症状が悪化することはよくあります。
その時に1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞が同一傷病か別傷病となるかの判断は、医師でなければ難しい問題であり、返戻により、医師照会(MRI画像、カルテ提出)があり、判断されることが多いようです。

脳梗塞MRI画像

今回の事例のように、複数回の脳梗塞があった場合、非常に込み入った話になります。
「初めて2級」として併合認定される場合:
  1回目の脳梗塞で発生した障害 + 2回目の脳梗塞で増加した障害 = 
  2回目の脳梗塞後症状固定したときの障害 が認定されます。
「差引認定」として併合認定される場合:
  2回目の脳梗塞後症状固定したときの障害 ー 1回目の脳梗塞で発生した障害 =
  2回目の脳梗塞で増加した障害 が認定されます。
差引認定となると、本来2級になるはずが、ならないことも充分ありえます。

1回のみの脳梗塞でも失敗が許されず、本サイトでは社労士の活用をお勧めしていますが、2回以上の脳梗塞であれば、なおさら社労士の活用をお勧めします。

本サイト参考ページ:肢体障害の障害年金は失敗が許されない理由 

 


障害年金対象外の神経症で障害年金3級を取得した事例

2024/01/06 うつ病

更新 2024/1/11

1.経緯
その方(60代男性)は、平成2年ストレスから対人恐怖症、頭痛、動悸があり、心療内科を受診し、自律神経失調症と診断されました。
その頃は仕事をせず、また国民年金加入期間でしたが、殆ど国民年金保険料を納付していませんでした。
平成8年から、一念発起し、食品製造会社で仕事をしながら整体の学校に通い資格を取得し、平成13年から資格を生かし、整体の会社でマッサージの仕事を始めました。
その頃知り合った女性と結婚されたのですが、女性にはひきこもりの娘さんがいました。
徐々に娘さんと奥様の精神状態が悪化し、家庭内が荒れるようになり、次第にその方も疲労困憊し、平成22年精神科を再び受診するようになりました。
平成30年整体の会社を定年退職し、以前勤めていた食品製造会社で仕事を始めましたが、精神的ストレスから、平成8年頃容易にできていた調理の仕事も思うようにできず、退職となりました。

離婚し家族のストレスは無くなりましたが、精神面のダメージは変わらず、何もする気がなくなってしまいました。

 

2.無料相談~障害年金対象外の神経症で、障害厚生年金3級決定 
その方は、遠方のためお電話で当事務所に相談がありました。
その方は、2重の問題がありました。
(1)平成2年の初診の心療内科受診の頃までは、無職でほとんど国民年金保険料を
  納付していませんでした。したがって、原則障害年金はもらえません。
  日本年金機構では、初診日時点の【保険料納付要件】が定められています。 
(2)現在治療中の精神科での傷病名が「適応障害」(F43)でした。
  適応障害などの神経症は障害年金の対象外であり、原則障害年金はもらえません。
  主治医は「適応障害」と診断しているところを、(当然ですが)「うつ病」などと偽ることはできません。
  日本年金機構の【障害年金認定基準(精神)】に次の記載があります。 
  (5) 神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則
     として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態
     を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。
これら2重の問題があり、障害年金受給は困難かと思われましたが、次のように対応しました。
(1)の対策:社会的治癒
  平成8年からの食品製造の会社、および平成13年からの整体の会社では、
  一生懸命仕事をされており、同僚にも認められており、その同僚たちとも付き合いが
  続いていたため、「第三者からの申立書(社会的治癒)」を複数名の方に書いていただきました。
  平成2年が本来の初診日ですが、社会的治癒を主張し、平成22年を初診日として、請求しました。
(2)の対策:うつ病の病態
  現在治療中の精神科での傷病名が「適応障害」(F43)でしたが、抗うつ薬を処方されていました
  ので、処方薬名:ミルタザピン を明記していただきました。
  また、無気力で、食欲もなく、風呂にもあまり入れない状態であったため、「うつ病の病態を示している」
  ことを、医師了解の上、明記していただきました。
これら2種の対策を行い、裁定請求を行い、無事障害年金3級を受給することができました。


他の社労士に無理と言われて、1級を取得した事例(眼の障害、発達障害)

更新 2024/1/9

1.経緯

その方(50代男性)は、小学生から、眼が悪く、黒板の文字もよく見えず、また中心部の視野が欠けているため、紙に書かれた直線に沿って、はさみで紙を切ることができなかったとのことです。
視力測定では、指示棒で「C」の字を指されても、どこを指しているかわからず、視力は正確に測定できなかったとのことです。
同時に、同級生とのコミュニケーションもうまくとれませんでした。
眼の悪さ、コミュニケーションの苦手さ両者が相乗要因となり、同級生、先生からいじめられ、父親からも虐待がありました。
小学生の時に、眼科で長期間検査があり、珍しい疾患「先天性停止性夜盲」と診断されました。
就職後も、書類を読みづらいため、仕事は遅く、ミスが多く、叱られ、「ミスが多いのは眼が悪いせい」と説明しても、誰も理解してくれず、解雇、転職続きで、人間不信になり、精神科にも通院するようになりました。
一般企業は難しく、就労継続支援A型やB型で勤務するようになりましたが、そこでも人間が怖くなり、ひきこもりになり、近所のコンビニでの食料調達や精神科への通院もできなくなりました。やむをえず、訪問診療を受けることになりました。

 

2.無料相談~眼の障害+精神障害の併合で、障害基礎年金1級決定

その方は、眼の疾患と発達障害、不安障害をお持ちの方で、他の社労士に相談したところ、「障害年金は無理」と言われ、当事務所に相談がありました。

障害認定基準(眼の障害)5ページ

障害認定基準(発達障害)61ページ
ご自宅近くの喫茶店でお話を伺ったところ、1時間ほどで声が出なくなり、ヒアリングは中断となりました。
その後、メールでヒアリングの継続を試みましたが、レスポンスはよくありませんでした。 
私がヒアリングの際、子供の頃からの眼の障害、精神面のことを細かく聞き、昔同級生、先生から受けたいじめ、父親からの虐待のトラウマがよみがえり、声が出なくなり、就労継続支援B型への通所もできなくなったとのことでした。
当人にあまり負担をかけないように、時間をかけて、じっくりメールでヒアリングを続けると、眼と精神の大量の医療機関の治療歴があり、また医療機関名、受診時期について本人が忘れていることも多く、病歴の調査にかなり時間がかかりました。
眼の診断書を現在受診中の眼科で書いてもらい、病名を見たところ、愕然としました。病名が5個あったのです。
1.先天性停止性夜盲

2.眼球振盪

3.網脈絡膜萎縮

4.黄斑変性

5.糖尿病網膜症

それぞれ、先天性疾患(小学生初診)もあれば、後天的な疾患もあります。
後天的な疾患については、ひとつずつ、初診医療機関の調査、初診証明の取得をしなければなりませんでした。
眼の複数の疾患、精神疾患、それぞれ、調査、書類の作成の依頼が必要になり、通常の方の3~4倍の作業量があったと思います。
診断書は眼と精神の2通、病歴就労状況等申立書は、精神1種類、眼は先天性の疾患1種、後天性の疾患2種を準備し、裁定請求をしました。
その結果、眼2級、精神2級の併合1級を取得できました。

併合等認定基準

当初は、ヒアリングが重荷となり、仕事に行けなくなるほどのプレッシャーとなり、その方にご迷惑をかけましたが、お礼メールをいただき、大変うれしかったので、紹介させていただきます。(原文のままです。)
「それから、もしもし 余計なお世話ならすみません。私の目の件は 書いて頂いた方が 依頼される方が増えると思います。
他の社労士さんは 話を聞いただけで 難病扱いにもかかわらず数字だけ見て ダメ出しされましたから。 ありがとうございました。」

 


20歳時点の診断書が無く遡及ができた、知的障害の事例

1.経緯

(若干個人情報を修正していますが、大筋の内容は事実通りです。) その方(女性)は、知的障害、自閉症のため、食事、洗面、入浴、着替え、などで常に介助・見守りが必要な方(当時34歳)で入退院を繰り返していました。 母親は、子供が34歳になり、初めて障害基礎年金をもらえることを知りました。

子供の頃からの障害がある場合の障害基礎年金について

母親は、自ら診断書、他の資料を揃えて、役所の年金課を訪問、障害年金の申請をしたいと伝え、経過を説明し、療育手帳と精神障害者手帳2級の手帳を提示したところ、「申請は事後重症になります」と、年金課の職員から説明を受けました。 そして、年金課の職員が年金請求書の「障害給付の請求事由」の欄の「2 事後重症による請求」に鉛筆で下書きのように〇印をつけたのです。 母親は、生まれつきの障害なのに事後重症になるのかと問いましたが、20歳の時の診断書がないからと言われ、仕方なく鉛筆の下書きの上にボールペンで、〇をつけ、裁定請求しました。 その後、事後重症1級が決定し、無事に年金の支払いが開始されました。 しかし、母親は、生まれつきの障害なのに遡及請求できないことに納得がいかず、複数の社会保険労務士事務所に相談しましたが、すべて無理と言われてしまったそうです。  

 

2.無料相談~遡及裁定請求~障害基礎年金2級遡及決定

母親は、複数の事務所に相談後、当事務所に電話をされました。 可能性は低いかもしれないものの、何とかなる可能性もあるため、ご自宅近くの喫茶店に伺い、じっくりヒアリングしました。 子供の見守りで、長時間家を留守にできないため、ご自宅近くに訪問し、非常に感謝されました。 すると、3歳頃知的障害の診断がされた後、現在まで多くの医師の診察を受けているとのことでした。 これらのカルテ、診断書等が病院に保管されていれば、遡及受給の可能性は高いと思い、複数の医療機関等に問い合わせし、3歳以降34歳まで、数点の診断書、証明書、医師意見書、などを集めることができました。 20歳時点ぴったりの診断書は無いが、20歳の前後に少なくとも2級以上の障害がわかる証拠書類から、20歳時点も障害等級2級以上であることを主張し、遡及裁定請求したところ、約4か月後、母親あてに障害基礎年金2級遡及決定の通知がありました。 (1級の年金は既に受給中であったため、1級受給開始時点で、2級→1級と額改定の扱いになります。) 母親は他の事務所に電話し、門前払い状態で、なかば諦めていた中、遡及受給が決まり、非常にお喜びいただき、次のメールをいただきました。 大変うれしかったので、紹介させていただきます。 「当初は、年金事務所でも、他の社会保険労務士さんの事務所でも、手元にある書類だけでは無理ですと即答されていました。 久納先生が丁寧に話を聞いて下さり、念をいれて書類を準備して下さったおかげです。ありがとうございます。」  


統合失調症:裁定請求却下、その後審査請求(不服申立)で障害基礎年金2級決定した事例

2021/03/27 統合失調症

1.病歴

その方(女性)は、出生時羊水を飲み込んで、呼吸をしていなかったそうです。 中学生、高校生の頃から幻聴が聞こえだし、耳鼻科に行ったものの異常なしという診断でした。 まさか当時は本人も母親も精神の病とは思いませんでした。 しかし大学入学後、幻聴、幻覚、妄想、うつ症状が酷くなり、20歳の時に病院に行き、重度の統合失調症と診断され、大学は中退しました。 統合失調症とは、こちら 母親と20年近く、医療機関を転々としましたが、一向に良くならず、入退院を繰り返しました。 私に相談を受けた当時も、幻聴の指示が聞こえ、自分の持ち物以外にも、親の大事な貴重品や、家具を勝手に持ち出し、リサイクルショップに売り払うようなことを繰り返していました。

 

2.無料相談までの経緯

一度母親が自力で資料を揃え、自宅近くの年金事務所で裁定請求をしたそうです。 初診証明は、20歳のときに、重度の統合失調症と診断された時点の病院で作成してもらったということでした。 年金事務所では問題なく受理されましたが、3ヶ月程後、却下通知が届いたそうです。 却下理由は、初診日の保険料納付要件を満たしていないという、単純な理由でした。 初診日の保険料納付要件は、こちら 受理した年金事務所で、それに気が付かなかったようです。 娘さんは重い統合失調症であり、ご両親は諦めきれず、私の事務所に相談することにしたそうです。

 

3.無料相談~裁定請求~裁定請求却下決定 遠方にお住いの方(母親)から、娘の障害年金の相談をしたいということで、お電話をいただきました。 その後遠方ながら、両親が私の事務所近くに来られ、相談を受けました。 まず、中学生、高校生の頃から幻聴が聞こえたということで、中高生のときの耳鼻科受診が初診と考えられるため、再度の裁定請求は可能と考えました。 中学生、高校生の頃にかかった耳鼻科に問い合わせしましたが、20年以上前のため、カルテ、その他の証拠は何も残っておらず、第三者証明に頼るしかありませんでした。 中学生、高校生の頃の友人、母親の知人等、当時の耳鼻科受診のことを知る方を、母親に片っ端からあたっていただき、第三者証明を書いていただきました。 初診日に関する第三者からの申立書は、こちら 統合失調症で現在受診中の病院に診断書を書いていただき、裁定請求をしました。 多くの申立書が揃い、おそらく大丈夫と考えていましたが、3ヶ月程後、却下決定が届きました。 初診日の確認ができないという理由でした。

4.不服申立(審査請求)~処分変更 障害基礎年金2級決定

納得できないため、母親と相談し、不服申立(審査請求)をすることにしました。 年金の決定に不服があるとき(審査請求)は、こちら 母親は初診後、10か所ほど医療機関を転々とし、その度に中高生の耳鼻科の話をしたと仰っていました。 カルテにそのことの記載があるかもしれません。 医療機関をあたっても、既にカルテが残っていないことが多く、難航しましたが、初診から7年程後入院した医療機関に奇跡的に1か所、中高生の頃の耳鼻科受診の記載がありました。 母親が話したことを当時の主治医がカルテに記載していたのです。 大量のカルテの中にたった1か所「耳鼻科」の文字を見つけたときは、天にも昇る気分でした。 そのカルテコピーを添付し、不服申立(審査請求)をし、5ヶ月後に、私に処分変更(不服申立が認められたということ)の通知がありました。 その後、障害基礎年金2級の年金証書が本人宅に届きました。 多くの医療機関とのやりとり、多くの方に第三者証明を書いてもらい、大変な思いで、ようやく勝ち取った障害年金にご両親は大変お喜びでした。

 

5.考察

統合失調症は、幻聴のため最初耳鼻科にかかるケースが多いですが、受診当時は幻聴の病識は無く、診断結果は「異常無」というものになりやすいです。 今回は耳鼻科受診時のカルテが残っておりませんでしたが、カルテが残っていたならば、耳鼻科からは「異常無」という診断名の初診証明(受診状況等証明書)が出てきますが、それが果たして後に判明する統合失調症の初診証明になるでしょうか? 耳鼻科から出される「異常無」という診断と「統合失調症」との因果関係を何らかの方法で立証する必要があります。 今回は偶然初診から7年後にかかった医療機関のカルテで立証できましたが、一般的な方法があるわけではなく、ケース毎に立証方法を模索するしかないと考えています。


器質性精神障害:診断書に傷病名を記載していただけず、非常に苦労した事例

1.病歴

その方(男性)は仕事中、頭が痛くなり、呂律も回らなくなり、病院に運ばれ、くも膜下出血と診断されました。 開頭による大手術があり、その後、てんかん発作も起こすようになりました。 当初、自分の名前も話せませんでしたが、リハビリで徐々に回復し、抗てんかん薬で、てんかん発作は抑えられるようになりました。 しかし、退院後、新しいことを覚えられない、二つの事を同時に理解できない、遂行機能障害(自分で計画を立てて、実行できない)、言葉が滑らかに出てこない、口頭ではある程度理解できても、文書を読めない、書けない、計算ができなくなった、などといった器質性精神障害があり、職場復帰(就労)はできませんでした。

 

2.無料相談~裁定請求~障害厚生年金2級受給決定

かなり遠方にお住いの方で、インターネットで奥様から問い合わせがありました。 最初にかかった医療機関での初診証明取得を終え、現在の医療機関の脳神経外科で精神の診断書を作成いただきました。 できあがった診断書を拝見し、たまげました。 器質性精神障害の診断書の作成をお願いしたのですが、何と傷病名欄に、「器質性精神障害」の記載が無かったのです。 傷病名には、「くも膜下出血、てんかん」としか記載がありません。 「てんかん」は、発作が薬で抑えられていたので、障害年金の対象になりません。 「くも膜下出血」は、精神障害の傷病名ではありません。 この方の主な障害は、「器質性精神障害」であり、障害年金2級相当の障害であることは明らかです。 傷病名に、「器質性精神障害」が無ければ、障害年金は100%もらえません。 その他、日常生活能力の判定、程度欄等重要な部分も不備が多く、呆れかえり、診断書の修正依頼書を作成し、送付しました。 しかしながら、それに対し、「修正しません」という驚きの回答でした。 その脳神経外科では、「器質性精神障害」という診断をしていないということでした。 信じがたいことでしたが、その後お電話でしたが、必死にお願いをして、検討していただくことになり、傷病名に「器質性精神障害」を加えていただけました。 他の修正もすべてではありませんでしたが、ある程度していただけ、「傷病名:器質性精神障害」で、障害厚生年金の認定日請求を行い、無事障害厚生年金2級が認められました。 その方は働けなくなり、奥様も働いていないため、一家無収入で、路頭に迷うところでした。 かなり遠方の方で修正をお願いするときは電話ではありましたが、土下座する思いでした。 必死の訴えを何とか聞いていただき、胸をなでおろしました。


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