10月 31st, 2020

うつ病:就労が影響して等級目安より軽度に見られた事例

2020/10/31 うつ病

1.病歴
その方は、作業中、自分の仕事と無関係なことをうるさく言う同僚がおり、パニック発作を起こすようになりました。
徐々にひどくなり、うるさく言う方が目の前に現れるだけで、手の震え、口がパクパク勝手に動く、顔面麻痺といったパニック発作が出るようになりました。
リストカット、など自傷行為も度々するようになり、会社は退職しました。
その後、就労移行支援施設に通所を始め、半年間そこで、就労の訓練をした後、一般就労先を紹介してくれる予定でした。
しかしながら、精神的に辛く、その施設も徐々に行けなくなり、今の通所状態では、A型就労事業所も紹介できない、と言われました。

2.無料相談~受任~障害厚生年金3級受給決定まで
その方が通院している医療機関から、紹介を受け、最初無料相談を受けました。
障害認定日も精神科に通院し、現在まで継続的に通院していました。
障害認定日時点通院の精神科と、現在通院中の精神科に傷病名:うつ病で診断書を作成していただき、年金事務所で申請手続きをしました。
その結果、障害認定日時点は障害等級3級にも該当しないとして、遡及は認められませんでした。
裁定請求日(現在)は、障害等級3級の受給が決定しました。
その方は、国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン

「障害等級の目安」に照らしてみると、障害認定日、裁定請求日(現在)共に、障害等級2級に該当していました。
しかしながら、障害認定日時点不支給、裁定請求日(現在)障害等級3級という結果となりました。
障害認定日時点は、一般就労(厚生年金加入)の会社に勤務中、現在は障害者のための就労移行支援施設に通所中ということで、厳しい結果となりました。
就労に関しては、国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 精神の障害

に次のような記載があります。
「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害の認定に当たっては、次の点を考慮のうえ慎重に行う。
日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。
また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。」
このような基準があるにも関わらず、「就労移行支援施設に通所中」というだけで、かなり厳しく判断されました。
なお、気分(感情)障害とは、精神障害のうち、長期間にわたり悲しみで過度に気持ちがふさぎ込む(うつ病)、喜びで過度に気持ちが高揚する(躁病)、またはその両方を示す感情的な障害を示す障害を気分障害といいます。
したがって、その方のうつ病は、気分(感情)障害に含まれます。
障害者総合支援法に規定される就労移行支援

に、就労移行支援とは、「一般企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う」とされています。
そのような施設に安定的に通所できていればまだしも、まともに通所できていない状況であり、医師にはその実態を診断書に表現していただいたにもかかわらず、形式的に厳しい判断がなされたのが実態です。
日本年金機構(厚生労働省)には、就労に対する過剰な評価を是正していただけるよう切に要望します。