障害年金制度の動向

障害年金不服申立て公開審理傍聴

先日、1年ぶりに障害年金不服申立て公開審理の傍聴をしてきました。
場所は厚生労働省社会保険審査室です。

年金の裁定や受給権の消滅など、厚生労働大臣の行った処分に不服があるときは、
不服申立てができます。
障害年金についての不服申立ては二審制となっており、一審目が審査請求、ニ審目が
再審査請求です。
最近障害年金に関わる法改正などがあり、審理の場での社会保険審査会、
保険者(行政)の発言から、その関係の考慮状況を確認する目的で、傍聴しました。

当日は件数は40件でした。
その中で、4件については、全国各地の社会保険労務士が代理人として意見陳述を
していました。
6件については、本人又はご家族が意見陳述をしていました。
他は請求者欠席のまま、審理されました。
傍聴者には、資料の配布、申立て内容の詳細説明はありません。
したがって、審査員、保険者、請求者(代理人)、参与から何も発言が無いと
傍聴者には、審理内容は全くわかりません。
しかし、何らかの発言があると、争点の一部を理解することができました。

当日は、下記のような説明、意見、質問/回答、陳述などがありました。

1.今年H28.6月1日受付以降の糖尿病新認定基準に関すること。
(保険者説明)
2.糖尿病に関して、HbA1cの測定方法の変更。
(日本独自のJDS値から国際値に相当するNGSP値への変更)
「診断書の値は一体どちらの値か?」請求者に質問。(審査会質問)
「JDS値。わざわざどちらの値か説明書きは不要と年金事務所で教示が
あった。」(請求人回答)
3.「糖尿病旧認定基準 血糖コントロール不良の基準:
『HbA1cが8.0%以上及び空腹時血糖値が140mg/dl以上』の
『及び』は、『かつ』か『又は』か?」(参与質問)
「かつ」が正しいが、「又は」と勘違いして不服申立したケースあり。
4.精神診断書
日常生活能力の判定と日常生活の程度の乖離。(複数あり。)
どちらを信用すべきかという問題。
5.解離性運動障害の診断書の選択の問題。(複数あり。)
「精神診断書を選択したが、肢体診断書が必要だったか?
年金事務所などの受付では、そのようなアドバイスをしないのか?」
(参与質問)
6.初診日の医証が得られず、薬局の領収証などで代用し、初診日が確認できない
とされたケースあり。
7.初診日が健康診断日のケース
「H27.10.1以降原則健診日は初診日として扱わないことになったが?」
(参与質問)
「条件が揃えば、本人申立で健診日を初診日に採用することはある。」
(保険者回答)
8.正社員で勤務実績あったため、精神3級が認められなかったケースあり。
実態:業務内容は本来より軽度の作業を与えられ、休みがち。(代理人陳述)
9.初診日の1年半後障害認定日において、急性期、原因不明で治療開始していない、
症状固定していない場合。
⇒「その後の追加診断書が必要、この後、追加診断書が提出されれば、審査
します。」(保険者医師)
10.9のケースで、追加診断書をつけて再裁定請求でも可。
「一事不再理の原則が適用され、却下されるのではないか?」
(請求代理人質問)
「追加診断書を付ければ、一事不再理の原則に該当しない。」(保険者回答)

下記、私の感想です。
ア.最近の法改正の関係(糖尿病認定基準、初診日の取り扱い)に関する説明、
意見はやはりありました。
イ.初診日の医証が無い場合は、念には念を入れ、なるべく多くの補助資料を準備
しないと、すんなりとはいかないと感じました。
ウ.精神疾患に関しては、やはり働いていると認められにくく、覆すには余程就労に
おける配慮がなされた実績の資料がないと難しいと感じました。
エ.障害認定日の診断書のみでは認定が困難な事例があり、参考になりました。
オ.裁定請求後提出の追加診断書の扱いは行政も統一的な対応がされていない部分
ですが、参考になりました。
カ.再裁定請求に関して、一事不再理の原則はありますが、やりようによっては
対応できることがわかり、参考になりました。

一般の方は、裁定請求時、上記1~10のような事項を考慮して、進めることは
困難だと思います。
その前に、殆どの方は上記のような事項があることすらご存知でないと思います。
障害年金の裁定請求等をしようと考えておられる方は是非、障害年金に詳しい
社会保険労務士にご相談していただきたいと思います。


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