10月 5th, 2017

障害年金不服申立て公開審理傍聴

先日(2017年9月)、1年ぶりに障害年金不服申立て公開審理の傍聴をして
きました。場所は厚生労働省社会保険審査室です。
年金の裁定や受給権の消滅など、厚生労働大臣の行った処分に不服があるときは、
不服申立てができます。
障害年金についての不服申立ては二審制となっており、一審目が審査請求、ニ審目が
再審査請求です。
肢体の認定状況に関して最近の動向を把握するために、傍聴しました。
当日の審理件数は14件でした。
その中で、3件については、全国各地の社会保険労務士が代理人として意見陳述を
していました。
1件については、ご本人が意見陳述をしていました。
他は請求者欠席のまま、審理されました。
傍聴者には、資料の配布、申立て内容の詳細説明はありません。
したがって、審査員、保険者、請求者(代理人)、参与から何も発言が無いと
傍聴者には、審理内容は全くわかりません。
しかし、何らかの発言があると、争点の一部を理解することができましたが、
当日は保険者、審査員の方の声が小さく、少し離れた傍聴席では傷病名など聞き取れ
ない事があり、残念でした。
当日発言のあった中で、傷病名等情報が一部聞き取れませんでしたが、気になる
審理が次の5点ありました。

1.社会的治癒が争点。
初診病院は既に廃院。医証なし。
その後は、病院に通院していないが、首の状態が徐々に悪くなっていったことを
病歴就労状況等申立書に記載。
初診から15年以上経過し、他の病院を受診。
保険者は、「首の状態が徐々に悪くなっていったこと」をとらえ、社会的治癒を
認めず。
参与3名より、社会的治癒を認め、初診から15年以上経過後、受診した病院を
初診としていいのではないかという発言があった。
社会的治癒が関係するケースは、行政を納得させられる証拠をそろえることが重要と
感じました。

2.初診日の時期が争点。
歩行しにくくなり、病院を受診したが、原因不明であった。
3年程経過し、別の病院を受診し、黄色靭帯骨化症と診断された。
請求者代理人は最初にかかった病院で歩行困難な症状を訴えていたため、その受診が
初診と主張。
保険者は、3年程経過後、受診した別の病院を初診と判断。
保険者医師は、最初にかかった病院が初診と認められないのは、原因不明であった
からではなく、黄色靭帯骨化症の症状が記載された医証(カルテなど)が示されて
いないためであると説明。
また、「医師は患者が口にしたことはすべてカルテに書きます。今回の患者が症状を
訴えていたら、カルテに書いてあるはずです。」と説明。
3年前とは別傷病とし、「初めて2級」の請求であれば、成立する可能性を示唆。

3.更新で、前回と診断書の内容がほぼ変わらないにもかかわらず、1級から2級に
変更となった。
保険者は、今回の診断書から、2級と判断したと説明。
ほぼ同じ診断書の内容であった前回、なぜ1級認定がされたかは、説明なし。

4.更新で、前回と診断書の内容がほぼ変わらないにもかかわらず、2級から3級に
変更となった。
参与は、今回の診断書で、3級認定はやむを得ないが、前回2級認定が甘かったの
ではないかと発言。
別の参与は、本人は納得がいかないと思うので、今回2級継続で様子見でいいの
ではないかと発言。

5.脳出血で障害年金の認定があり、その後徐々に片麻痺が悪化し、8年後額改定
請求をした。
保険者は、脳出血の症状が8年後に悪化することはないと主張し、額改定は
認められないと説明。
ご本人は身体が不自由ながら一人で出席されており、脳出血の1か月後、一時的に
心臓停止があったと説明。
審査員と参与が、心臓停止時にもし別の傷病があれば、初診として裁定請求できる
可能性を示唆。

上記1:社会的治癒、上記2:初診日時点では原因不明であった、場合などは、
一般の方の対応は難しいと思います。
このようなケースでは、是非障害年金に詳しい社労士に相談されることをお勧めします。

上記3,4のような更新では、前回とほぼ同じ診断書を作成してもらえば、同一等級を
認めてもらえるはずと、安心してはいけないことがわかります。
更新時も最初の裁定請求をするときと同じように、診断書以外にもいろいろな資料を
揃えることをお勧めします。

上記5のケースでは、審査員と参与が、ご本人に対し別の方法で額改定できる可能性を
アドバイスしていました。
しかしながら、会話はかみあっておらず、ご本人はそれを理解されていない様子でした。
傍聴者がその場で口をはさむなどということはできません。
行政が作成する正式な決定書は、専門用語を使った文章で理由、結論が書かれています。
とても一般の方が読み下せるものではありません。
一般の方にもわかりやすい噛み砕いた説明や今後のアドバイスを記載する配慮は無い
ように思います。
今回の方は、社労士の力を借りずに自力で請求手続きを行っていらっしゃったよう
ですが、再審査請求棄却の決定書が送られ、その後のアクションもわからず、途方に
くれるのではないかと思います。
その方への連絡方法がわからない今となっては、その方が障害年金に詳しい社労士に
相談されることを祈るしかありません。